偉大な漢、逝く

競馬を始めたきっかけはダービースタリオンⅡだった。


お金のない小黒牧場は痩せた肌馬にいつもナイスダンサーとかマチカネイワシミズを種付けしながら
いつかあいつを種付けする日を夢見ていた。
真っ黒な奴じゃなく、栗毛のあいつをばしんとつける日を。


あいつの一発は確か1500万か2000万だったと思う。
小黒牧場の総資産を質に入れてもあいつの一発には敵わなかった。
やっと種付けできた時は本当に嬉しかったんだ。
でも、無理してつけたあいつの種は残念ながら不受胎で泣く泣く牧場は破産した。


再建してこつこつ賞金を稼いで再び奴の種を頂戴して生まれたのは栗毛の牝馬だった。
あいつによく似た栗毛の牝馬
牧場の台所事情を知ってか知らでか彼女は良く稼いでくれて
初めてGⅠを取ったのも彼女だった。マイルCSだった。


それからだいぶ経って新しいダビスタが出るたび新しい高額種牡馬に順位を抜かされていく彼だったが
やっぱり彼をつけるのが好きだった。
私よりちょっと年下のイかした栗毛野郎のあいつ。


リアルで競馬をはじめたころ、まだやつの子供たちはたくさん走っていた。
真っ黒の産駒になんか負けるなよ、と意気込んで馬券を買った。


あいつはいつの間にか種牡馬を引退していた。
だんだんあいつの産駒たちが姿を消し、あいつよりも若い真っ黒い奴が死に
最近は母の父によくあいつの名前を見るようになった。
私よりちょっと若いのにもうじいちゃんなんだー、と笑った。
たくさんいい仕事をしてきたから今は功労馬としていい塩梅にしているんだなと思った。


ノーザンテースト 死亡」


今日のYAHOOのトップに載っていた文字を見て愕然とした。


競馬を知らなかった私がハイセイコーとともになぜか知っていた大種牡馬
たくさんの馬が病気やけがで死んでいく中、33歳・老衰での大往生。


いつか私がそっちにいった時にたくさん話を聞いてもらうから覚悟しておいてくれよ。
何度もループしながらのくだらない話ばかりだけど聞いてやってくれよ。
「ゲームのことなんか知らねえよおらぁ」とでもいってやってくれたまえ。