これからの人 去って行く人


昨日から店舗に配属される新卒の女の子が研修に来ていた。
高校を卒業したばかりのピチピチ18歳。まぶしい。
童顔のアサノさんと並んで座っていると妙に微笑ましい。



会社の取引先のお嬢さんとのことで
使えないからといって辞めさせることができないから少し様子を見たい、
店に出せる状態でなかったらしばらくここにいてもらって様子を見たい、
との人事の考えだったのだが
電話応対にいくらか硬さが残るものの
自分の仕事がなくなると『それ、私がやります』と言えるあたり有望じゃないかと思う。



土曜日なので電話もあまりなく3時のお茶なぞと洒落込んでいた所、彼女の配属先の店長がやってきた。
『どぉも〜』
いつもの様子の店長の後ろに一緒に線の細い青年がついて入ってきた。



『あ〜、こいつがいつも営業日報を書き間違える幸四郎(仮)っす』



毎月の頭に営業日報の検算をするのだが、この店長の店は異様に計算ミスが多かった。
間違えている日報の発行者を見ると9割方は彼の手によるものだ。
店長曰くこの彼は検算をしないらしい。
間違えた日報の報告はいつもこの店長にしていたのだが
あんまり間違えが多すぎて嫌になった店長は直接私に文句を言ってもらおうと
ここ最近はその彼に直接私に電話をさせていたので声だけは聞いた事があった。



「小黒さん、幸四郎(仮)さんっていい男らしいっすよ。でも小黒さんの好み・・・じゃないかなぁ」
アサノさんが以前にやりと笑いながら言っていた。
そこまで言うのならよっしゃ、いつか見究めてやろうと思っていたのだが



武幸四郎をもっともっとキュートにした線の細い色白の青年、アリジャネェカ!
久しぶりの上玉。脳内キュートな青年コレクション入り即決である。
アサノさんのウソツキー。
頂いたおみやげのケーキをご馳走になりながら情報通の店長から社内人事の裏話を聞く。
話の中でふと幸四郎君(仮)は4月いっぱいで辞めるとのことを聞く。
ありゃー。残念。



「小黒さん、どうだった?」
アサノさんがニヤニヤしながら聞いてきたので無言でニヤリと笑いながら立てた親指を突き出す。
「え〜??絶対違うと思ったのに〜意外だな〜。小黒さんの脳内鳥籠にコピペですか?」
ちなみにアサノさんの脳内では小黒はドSでゴムフェチで鳥籠マニアということになっているのだそうだ。
マイリマシタ。



店長達が帰り、我々3人は再びお仕事モードになる。
ピチピチ18歳に頼んだ計算の仕事の様子を見るともう終わりそうだ。
1度教えただけなのにきちん要領よくとこなしてくれて嬉しい。
3人ほぼ無言で仕事を進める。ちらっと時計を見ると間も無く終業時刻。



「そろそろ終わりましょうか」
アサノさんの一声で我々はかたつけをはじめた。
お疲れ様、電話の声も少し大きくなったよね、お店にいったらもう少し大きくしていこう、
お互い楽しく仕事していこうね、最後にお店にもお客さんにも可愛がられる店員さんになってね、
というと彼女はにっこり笑ってはい、と返事をした。



素直で気立てのいい彼女、きっといい店員さんになれると思う。