親父殿が遊びにやってきた

「よう。コーヒーを飲みにきたんだ」
ドアを開けると釣り焼けで松崎しげる色の親父殿が目の前にぬっと私の大好きな豆大福と団子を差し出す。
午後から代々木のスカパラライヴに行く妹に相手にしてもらえなかったらしい。
晩飯うちへ食べに来る?と聞いたが一人で食べるとのこと。


「あの黒いのは?」
親父殿が座るなりきょろきょろするので柱の陰に隠れて様子を窺うビッケを指差す。
ビッケは声の大きい親父殿になかなか懐かない。
猫なんか好きじゃない、生き物なんて飼うもんじゃないと親父殿はよく言う。
ヤマトが死んだ時、一人淋しそうに飲んでいた親父殿。
妹に怒られながらも膝に乗っかった猫のミーにテーブルのおかずを分けてやる親父殿。
自分より先にいってしまわれるのが辛いから自分で予防線を張っているんだろう。
声と態度はでかいが神経はひょろい辺りに血の繋がりを感じる。


体調や仕事のことなどとりとめのないことを話して親父殿は昼前に帰っていった。
晩飯にと昨日炊いて冷凍しておいた鶏五目をお土産に持たせる。
飯を冷凍で保存するという発想が新鮮だったらしく
何分チンするんだ?ラップは取ってチンするのか?冷凍して味は変わったりしないのか?と
冷凍鶏五目の質疑応答で10分くらいかかった。
食べてみてうまかったら今度はおにぎりにして届ける約束をした。


ちゃんと食ったかな。