ご機嫌伺いにきたよ

帰宅すると遠くからころころと鈴の音が聞こえた。
自転車に鍵をかけていたら暗闇からひょこんと顔を覗かせたのはクロロ。



また脱走してきたらしい。



遊びに来てくれたことは嬉しいさ。でもさ。
こんな暗くて寒い夕方なんだもの、主さんが心配するよ。
君と主さんで一緒に作った幸せいっぱいのたぷたぷおなかを揺らしながら走り寄ってきてくれる君。
迷子の帰宅を待っているのってすごく淋しいんだぞ。
君の主さんもきっとすごく心配してる。



ごつんごつんと擦り寄ってくるクロロの頬を撫でながら
迷子にしてしまった彼女を思い出していた。



おうちへお帰り。
離れていても、姿を見られなくなっても私はずーっとずーっと君が好きだよ。
だから『またね』って言わない。
だって『またね』って言ったらまた会っちゃうから。
私と君が会っている時
主さんは君の鈴の音が聞こえるのを泣きながら待ってるかもしれないんだから。



会いに来てくれてありがとうね。
でも、主さんを悲しませちゃだめだぞ。
きっと主さんは私なんかよりもずーっとずーっと君が好きなんだから。



ドア越しのビッケの声もちょうど大きくなってきたのでクロロにバイバイ、と手を振る。
首をちょっと傾げた後、ふいっと暗闇に潜っていったクロロ。
頬を撫でながらぶつぶつ呟いていた人間のタワゴト、わかってくれたのかな。