窓ガラス越しのおうち

5日ほど前からチビママの姿を見なくなった。
チビママ一家の面倒を見ていたおばさんに訊くと
『安全なここにチビ達を残して自分は他の餌場を探しにいったのではないか。子離れなんじゃないか』とのこと。
そして3日ほど前にビッケと一番仲の良かった三毛が1匹いなくなった。
甘え上手な営業部長体質の彼女の事だから自力でおうちを見つけたのではないかと思う。


残った3匹は我が家のベランダにねぐらを替えたらしい。
ベランダの出入口は風が入りやすいようにと遮光カーテンを少し上げて安全ピンで留めてあるのだが
そこから川の字の3匹の姿が見える。
よく見ると1匹の三毛が黒い男の子のお腹に顔を埋め前足で柔らかくふみふみしている。
仔猫はたくさんお乳が出るようにお母さんの腹をふみふみするのだそうだ。
シロチのように大人になってもその行動が残る子もいる。
チビ達がやたらビッケの腹に顔を埋めたがるのはチビママと同じような色だからかもしれない。


オレンジ色の毛布の上にごろんと寝転がったビッケの姿。
暗いベランダで窓ガラスから漏れる光の中に身を寄せて眠る3匹の姿。

光が当たってるところまではおうちの中なの
だからあたしたちおうちの中にいるのと一緒なの

そんな風に思っているように見えた。


3匹が完全に眠りについた頃、居たたまれなくなってカーテンを下ろした。
私に何かできることは無いのだろうか。